湯もみ型付けの元祖久保田スラッガーに、湯もみ風型付けを見てもらいました
久保田スラッガーの弊社担当M氏が弊社へ訪問してくれた際に、
湯もみ風型付けをしたグラブをお見せしました。
そして、M氏にイレブン湯もみ風型付け加工の仕方や工程、経緯も説明しました。
【イレブンの湯もみ型付け風型付けの例】
M氏から
「この型付け方法はありですね」
という回答を頂いたので、正式に
「湯もみ風型付け」という名前でに型をつけていきたいと思います。
湯もみ型付けをすると元々いい革の成分が抜けてしまう
以前からグラブを販売するにあたって気になっていたことですが、「ここのメーカーのグラブの革がいい」とグラブの革質にこだわるお客さんは多いです。
そしてご購入いただいたお客様のうち2割くらいの方から、そのグラブを「湯もみ型付けしてほしい」と依頼を受けることがあります。
購入前は革質を気にされていたはずなのに、柔らかくし形をつくる工程で数秒とはいえ「お湯につけたり」「スチーマーに入れたり」する加工をご希望される。
イレブンでは、
湯もみ型付けをすると元々いい革がもっていた成分が湯引きすることによりいくらか抜けて、購入時の革質とは違う状態になってしまうということをご説明しております。
すべてをご理解いただいたうえで湯もみを希望される方はそのうちの1割くらいです。
50人に1人(もう少し多いかもしれませんが)くらいの方が湯もみ型付けをご希望されますが、ご説明させていただいた上で湯もみ型付けをご希望されるのは、ほぼ「久保田スラッガーのグラブを購入された方」です。
湯もみ型付けという言葉が独り歩きしていて「どんな加工かは知らないけど、新しいグラブに湯もみ型付けはいいらしい」と思われている方が多いように感じます。
「湯もみ」という文字から考えるとお湯の中でグラブを揉んで型をつけるように思われそうですが、実際は料理の用語でいうと「湯引き」という手法を用いてグラブを加工しやすくします。
「湯引き」とはお肉やお魚の表面にさっとお湯をつけ表面だけ熱して、肉の臭みや余分な脂や灰汁を取り除く料理の下準備のことを指します。
グラブの型付けの場合だと、グラブをお湯に数秒間浸すことにより「グラブ皮革に含まれる成分を若干とり」表面が暖かい柔らかいうちに形を作ってしまおうというものです。
グラブ皮革として最善の状態になるよう「鞣したのに」、型をつけるときにはその鞣し工程を無視します。
そうなると湯もみ型付けをしたグラブは、使用するときに「グラブの鞣しやグラブの革の選定」は特に重要ではなくなってしまいます。
久保田スラッガーのグラブは湯もみ型付け用に作られている
久保田スラッガーのグラブが他社のグラブと違う点はまさにここで、湯もみ加工をする前提で生産しているため、鞣し方もグラブの皮革選定も他社の品質とは異なる基準で考えられ生産されてます。
したがって久保田スラッガーのグラブは、湯もみ型付けをしてくださいとの依頼があれば湯もみ型付けをさせていただきます。
ところが困ったことに、「ミズノプロ」「アイピーセレクト」「ゼットのプロステータス」など見るからにきめが細かくてコシのありそうないい革のグラブも湯もみ型付けの依頼を受けることがあります。
これらは湯もみ型付けを前提に作られたとは思えない質の皮革を使用したグラブです。
お店側としてはこういうグラブであれば、その革の良さを失わないように型付けをしてあげた方がいいと思うわけです。
6万円以上もするミズノプロのグラブや革質がいいと評判のアイピーセレクトのグラブ、最近人気急上昇中のゼットのプロステータスのグラブをわざわざ湯もみ型付けをして形をつくることに疑問を感じました。
商売とは言えどういう加工方法なのかをちゃんとした説明をせずに、湯もみ型付けをしてほしいと言われたからしましたというのもおかしいですし、一方で湯もみ型付けをご希望のお客さんの要望を聞かない、というのも接客業としてはおかしな話です。
湯もみ型付け用に作られていないグラブ用の型付けを考えました
湯もみ型付けという型付け方法が悪いこととは思いません。
30年も前に考案されたこの型付けの仕方がいまだに根強い人気があるということは、湯もみ型付けという方法がグラブにとって理にかなっているということが言えると思います。
しかし、久保田スラッガーのグラブのように湯もみ型付けを前提とした鞣しの皮革と、高級なバッグにも使用されているようなミズノのキップレザーやプロステータスレザーの皮革を同じに考えて何でも「湯もみ型付け」ではないと感じるのです。
いろいろ試行錯誤した結果、30年もたっていればお湯にグラブをくぐらせる以外の方法で湯もみ型付けのような効果を得られる別の方法が考案されていても不思議ではないはず。
しかも、ミズノプロやアイピーセレクト、ゼットプロステータスなどの「いい革」のグラブには湯もみ型付けではない方法の方がいいのではないか?と考えた結果、
湯もみ風型付けにたどり着きました。
イレブン湯もみ風型付け加工のはじまり
弊社の常連さんで前回久保田スラッガーの型付けグラブを購入してくれたお客様との店頭でのやり取りで、「湯もみ型付け」をしたような形状・柔らかさを湯もみをしないでできないもんかな?という話をしました。
湯もみをしようとしまいと「グラブに関節を作る」と呼ばれる作業はできるわけだから可能かな?と2か月ほど試行錯誤してみたところから始まりました。
そこで考えたのが、湯もみの通常のハンマーでたたいてポケットを付けていくなどの工程をとらないで、手もみで時間をかけてコツコツ仕上げていく型付けです。
もともとイレブンでお受けしていた手でもんでグラブを柔らかくしていく工程と、弊社社長の意向で、湯もみ型付けの講習を受けたにもかかわらず湯もみ型付けはできるだけしないようにという弊社の方針が生んだ偶然の型付けです。クレラップを使ったひと手間が結果として湯もみ風になった偶然の産物です。
イレブンの湯もみ風型付けのメリット
①お湯につけたり、水蒸気に当てたりしないのでもともとの皮革の状態に影響を与えません、若干オイルを使用するので塗った部分は多少色が代わりますが、色落ちや色抜けはしません。また、湯もみや特にスチーマーをかけた時に
革ひもが硬くなり、もろくなりやすいのですが、そういう心配はございません。
②メーカーさんが設計したグラブ機能をそのまま生かすように型をつくりま。
ゼットプロステータスのグラブであればハサミ捕りを推奨しているので、ハサミ捕りをしやすいように、久保田スラッガーやIPセレクトであれば、握り替えを素早く行えることを重視していますから、浅く広くグラブの基本設計をそのまま生かせるように型だししていきます。
イレブン湯もみ風型付けのデメリット
①湯引き(湯もみ)をしないので革の成分を抜きません。
その分湯もみ型付けほど柔らかくはなりません
②イレブンにボールがとりやすいグラブの形状のこだわりはありません。
メーカーの基本設計ごとに型の形状が違います。
型付け専門店のようなどんなメーカーのグラブにもお店こだわりの同じ型をつけることは致しません。
③他店で購入されたグラブには湯もみ風型付け加工はお受けいたしません
弊社イレブンでご購入いただいたグラブのみとさせていただきます。
湯もみ風型付けの特徴
グラブの色が変色しない
写真を見ていただくとお分かりいただけると思いますが、グラブ本体をお湯に浸透させるわけでもハンマーでバンバンたたくわけではないので、本体の変色はほとんどありません。
【型付け前】
【型付け後】
【型付け前】
【型付け後】
今回使用したのは専用のオイルとクレラップの2種類のみです。
湯もみ風型付けはこんな選手向け
・湯もみ型付けが好きではないが、グラブを購入してすぐに使いたい選手
・マメにお手入れをすることが苦手な選手
・湯もみ型付けをする人の加減にもよりますが、柔らかすぎるグラブを好まない人
イレブンの湯もみ風型付けの注意事項
・忙しい時期にはお断りすることもあると思いますが、お話しをしているうちに店長の気まぐれでお受けするかもしれません。
・他店で購入の持ち込みグラブやグラブの程度によってはお受けできません。
・キャッチャーミットは非常に時間がかかってしまうので、お受けできません。
・湯もみ風ですので、「湯もみ型付けのような感じ」は期待しないで下さい。
・湯もみじゃないので乾かす工程はないのですが、じっくりとなじませる
ので1週間とお時間がかかります。