とりあえず「送りバント」は正解なのか?第2回
そもそも全国的に「送りバント」が普及した要因はなんでしょう?
小学校からプロ野球まで、ベンチからのサインで「送りバント」が出ないことは試合展開にもよりますが、ほぼほぼないと思います。
甲子園大会でもたまにバントを一切しないチームが出場しますが、全体からみると1割にも満たないと思います。
今から10年ほど前、春のセンバツ高校野球大会でメイジャーリーグの某チームのユニフォームにそっくりな静岡県代表の常葉菊川高校野球部は、送りバントを駆使せずにセンバツ大会を優勝しました。
「送りバント」を戦術として選択しなくても公式戦で勝てることを一方で立証してくれたわけでもあります。
全く使わないというのは極端ですが、常葉菊川高校野球部のような「送りバント」を用いないで結果がでたことがあっても目にするのは少数です。
「送りバント」で2塁へ進めることが主流である要因はなんなのかな?と考えてみると、
他のスポーツでもそうだと思いますが、どのレベルでも野球チームの監督を務める方で「野球をやったことがない人」が監督をすることはほとんどないと思います。
強いチーム、実績のあるチームであればなおさらで昨年、ハローワークで監督の求人広告を出した秋田名桜高校は一般の方へ公募をかけましたが、結局は高校野球の監督をされていたベテランの監督でした。
野球強豪高校の監督を務められる方は「同校のOB」か「野球人として実績のある方」が多数を占めます。
「今更何を言っているの?」と言われるほど当たり前の話ですが、ここに「送りバント」主流説が揺るがない要因があるのでないかと思われます。
野球界で実績を修められているということは「自身の培った経験が正しい」ということを意味しますので、「送りバント」で得点圏にランナーを進めて勝っている「実績」があれば、その部分を変える必要はないわけです。また、多数派の監督が「送りバント」を使用しますので、「送りバントでキッチリと進塁させて後続の打者で返すこと」が戦術として正しいとなるわけです。
今から15年ほど前、現在ファイターズのファーム育成コーチをお勤めの島崎毅さん(当時ピッチングコーチ)に、当時のトレイ・ヒルマン監督が公式戦で「送りバント」をあまり使用しないのは何ででしょうか?お尋ねしたことがございます。
メジャー式だからなのかと思っていましたが、当時のファイターズの投手陣の防御率がよろしくなく、「一試合平均、4点から5点とられるから5点から6点取らないと試合に勝てない」。
一試合に6点取ろうと思うとランナーが出塁した回は1点でも多くの点数を取りに行くので、送りバントでワンアウトとられて進塁させるよりもフォアボール、シングルヒット、作戦面では安打の可能性があるエンドランを用いた方が、「犠打」を用いるよりも1イニングでの得点力が大きいから、送りバントをあまり用いなかったそうです。
投手力が上がってくれば犠打も使うんだけどね、というような話を聞かせてもらいました。
後に島崎コーチがおっしゃっていたいたことは現実となりました。
中継ぎ・抑え投手が充実し、チーム防御率で一定の結果が出始めたファイターズは、2006年に現在独立リーグの群馬ダイヤモンドペガサスで監督をお勤めの平野謙さん(当時1軍外野守備走塁コーチ)を招聘し、盗塁・犠打の数字が大幅に改善、2007年には田中賢介選手が平野さんの持つパリーグの年間最多犠打記録を更新するなど(2007年時点)、「送りバント」をはじめとする犠打や走塁を作戦面で用いることにより安定して優勝争いをするチームへと変わりました。
チーム事情によって戦略は変わらなければならないわけです。(つづく)
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