野球クイズ【問53】
先日、お客さんとルールについて話す機会がありました。
中学硬式野球の試合ではお父さんたちが審判をする機会があるらしく、ルールを覚えるのが大変だということでした。
さて、その時に話題になったのが審判の妨害というものでした。
審判の妨害とは、プレー中に審判が誤ってボールに接触してしまうことでプレーの妨げになるケースのことを指します。
滅多にないことではあるのですがプロ野球のペナントレース中にも実際に起こることなので覚えているといいと思います。
問題
ツーアウトランナー満塁のケースです。
カウント3-2からの6球目を打者が打ちました。
ピッチャーの頭上を通りぬけるヒット性の当たりでしたが、センターへ届く前に2塁審に打球が当たり、若干ゴロの方向が変わりましたがセンター前へのヒットとなりました。
ツーアウトの3-2のフルカウントですので、投球と同時に打者は進塁のスタートを切り、このヒットで3塁ランナーと2塁ランナーがホームインしておりました。
ところが、この直後に審判団があつまり競技を開始しております。
さて野手が誰も触っていない打球が、審判に直接当たり守備側が捕球した場合判定はどうなったでしょうか?
1、仮に審判に当たっていないとしてもセンター前へのヒットであったことは間違えない。
3ボール2ストライクのカウントで、走者は投手の投球と同時に走り出している状態でのセンター前ヒットなので、審判に当たろうと当たっていまいともワンヒットでランナーが二人ホームインできていると審判団が判断し2点タイムリーヒットとしプレー再開。
2、直接審判に打球が当たったので野手の守備機会を奪った打球であるという判断からヒットは認められず、打者の守備妨害でバッターアウト、スリーアウトチェンジで0点とする。
3:打球が直接審判に当たった時点で、ボールデットとなり打者走者の安全進塁権が発生、打者は一塁へ進塁しそれぞれの塁のランナーは押し出される形で進塁、3塁ランナーのホームインで1点。
さて、正解はどれでしょうか?
野球クイズ【問53】答え
多くの方が、
グラウンドに転がる石ころと同じ扱いで「プレーがそのまま続行されるケース」だと思っているのではないかと思いますが、
「ボールが当たった時点でボールデット」となるケースもあります。
野球規則5,09 次の場合にはボールデッドとなり、走者は1個の進塁が許されるか、または帰塁する。その間に走者はアウトにされることはない。
の(F)より、内野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で走者または審判に触れた場合、あるいは内野手(投手を除く)を通過していないフェアボールが、審判に触れた場合―打者が走者となったために、塁を明け渡す義務が生じた各走者は進む。
【原注】 打球が投手を通過してから、内野内に位置していた審判に触れた場合は、ボールデットとなる。フェア地域で野手によってそらされた打球が、まだインフライトの状態のまま、走者または審判員に触れ地上に落ちるまでに、内野手によって捕球されても、捕球とはならず、ボールインプレイの状態は続く。
とあります。
内野手(投手を除く)を通過していないフェアボールが、審判に触れた場合、
どのような状況であっても、即座にボールデットとなりプレーが中断されます。
そして、5,09の記載どおり「走者がアウトになることはありません」
しかも、打者には安打が記録されます。
というわけで、
正解は3
打球が直接審判に当たった時点で、ボールデットとなり打者走者の安全進塁権が発生、打者は一塁へ進塁しそれぞれの塁のランナーは押し出される形で進塁、2塁ランナーは3塁へ戻され3塁ランナーのホームインの1点のみ得点となります。
今回の問題は2015年のプロ野球交流戦DeNAベイスターズとソフトバンクホークスのゲームで実際にあった出来事です。
2アウト満塁、カウント3ボール2ストライクの場面で打者柳田選手の放った打球はセンター前へ、カウント的にも投手が打者へ投じた瞬間に3人のランナーはスタートを切ってますのでワンヒットで2点入るはずなのですが、なんと1点のタイムリーヒットどまり。
ソフトバンク2-3DeNAのスコア。
逆点の2点タイムリーとなるはずが、同点どまりとなり続く打者は凡退したため幻の2点となりました。
そして最終スコアは何と!3-4でベイスターズの勝利で終わり。
あの時審判に当たっていなければ・・・ということにもなってしまいました。
今回のケース、攻撃側に不利な結果となりましたが、守備側に不利に働くケースもあります。
例)陽射しの強い夏場だと、まぶしくて打球を見失うことがあります。
ワンアウトランナー1塁のケースで、打者の打球がショート、もしくはセカンドへの正面のゴロでダブルプレーをとるのにおあつらえ向きの打球が飛んできたとします。
ところがこのとき、太陽の光が目に入りボールを見失った審判が、ボールの転がる方へ移動してきて、野手が捕る前に打球に当たってしまったとしたらダブルプレーで3アウトが一転、ワンアウト1・2塁と攻撃側へのチャンスが広がることとなります。
審判に打球が当たってプレーが止まるケースは滅多にあるものではなく、しかもその際のルールが何ともどちらかに理不尽なルールであるわけです。
投手の投げたボールを捕手がそらして球審の足や身体に当たった場合や、野手が触れたあとの打球、野手が投げたボールが審判に当たった場合はボールインプレーでそのまま続行です。
今回のケース、打球がフェア地域で内野手が触れる前に塁審に当たった場合はボールデットでしかも安打扱いとなり、必ずしも「審判は石ころと同じではない」ということを覚えておいていただきたいと思います。
打球に当たろうと思っている審判は一人もいないと思います。
まして今回のケースは日本球界でも屈指のスイングスピードを誇る柳田選手の打球で、当たり所がわるければ大怪我してしまいます。
当事者にとっては文句の一つも出てきてしまう出来事ですが、災難だと思い、この理不尽な結果を及ぼすルールを覚えておいていただきたいと思います。
以上、審判に打球が当たった場合でした。