超二流のススメの三村敏之さんとは?
広島東洋カープ緒方監督、阪神タイガース金本監督を育てた、元広島東洋カープ監督三村敏之さんの考える野球選手としての生き方を綴った一冊。
福山大学客員教授でもあった三村氏の研究テーマそのままの内容です。
三村敏之氏というと、広島東洋カープ監督時代11.5ゲーム差からの逆転劇、「世にいう長嶋ジャイアンツのメークドラマ」を演出してしまった不運の名将というイメージもお持ちの方もいらっしゃると思います。
しかし、プロ野球のオールドファンからすると、昭和を代表する「いぶし銀」と称される守備の名手であり、送りバントの名人、シュート打ちのお手本のような選手であったそうです。
「いぶし銀」と呼ばれた職人気質の三村氏が語るプロ野球の「超二流」について、三村氏の著書「超二流のススメ」からご紹介したいと思います。
本書は、チームの4番やエースになれなくてもチームにとって欠かせない存在を目指す選手やマネージャー、高校球児を予定の中学球児、入学したばかりの高校一年生球児はもちろん、新入社員や転職を検討中の会社員のかたに是非とも読んでいただきたい内容です。
超二流のススメ
出版社:株式会社アスリート
著者:三村敏之(元広島東洋カープ監督)
超二流のススメの目次(書籍より)
第一章 「超二流」を目指せ
「一流」?無理なんです
・一流とは特別な存在
・がむしゃらに頑張らなくても大丈夫
「一流」の落とし穴
・形を変えられる石
・「10」ではなく「8」を目指す
・「3割」よりも大事なもの
・打率と長打力
・イチローには決してなれない
第二章 三村流「超二流」への扉
「超二流」の原点―広島商業の野球
・広商野球の価値観
・なぜアンパイアの練習!?
・スタンドでへし折られた鼻
・「広商マジック」の本質
カープ入団-「一流」への目覚め
・意外だったドラフト指名
・一年目の不思議
・「どうして私を使うのか」
飛躍期-上昇志向の日々
・レギュラーへの脱皮
・広岡、小森&関根、三人のコーチ
飛躍期-ライバルとベテラン
・西本明和から得た教え
・スーパースターの裏側
「3割を打ちたい」-苦悩と現実
・打率2割1分6厘
・「3割」への工夫
「一流」への葛藤
・シーズン19個の死球
「チームを強くしないといけない」
・オールスターでの劣等感
・初の外人監督、ジョー・ルーツ
初優勝への賭け―ルーツの思い
・「優勝」を明言したルーツ
チーム改革―ルーツからのヒント
・「君には3割はいらない」
・2番打者としてのシーズン
「オレは一流にはなれないのか」
・心に残った見えない「何か」
「一流」と「超二流」-現役最後の思い
・「自分の打撃」の無力感
・最後に悟った「超二流」
・「努力」という言葉は好きじゃない
第3章「一流」と「超二流」-本質を教えてくれるプレーヤーたち
二軍監督としての出会い
・選手の適性を見つけること
金本知憲-もう一つの「一流」
・「一流」を感じさせた理由
・金本の意志力
「緒方孝市を二度生んだ母」
・技術は10、しかし・・・
・二軍監督時代の模索
「超二流」の方法論-元木大介(巨人)の場合
・ジャイアンツでの「生き方」
・いちかばちかの「ヤマ張り」
「超二流」の方法論-高信二(広島)の場合
・「守りのスペシャリスト」
・「自分を生かして他を生かす」
・投手にとっての「超二流」のポジション
第4章 「超二流」のススメ―チームにとっての方法論
チームをどう機能させるか―一流チームの盲点
・名作の陶器より普通の茶碗
・必要だった音と山田
・広島にとっての明るい光明
・理想的だったV9巨人
巨人と阪神―「一流」球団の明暗
・カリスマ的監督の存在
・人気球団・阪神の苦悩
・巨人と一流デパート
野球の本質を見極めるために
・「右打ち」の真実
・「三塁走者」の意味
・日本人は右には打てない
対巨人の方法論―「一流」を打倒する
・巨人が背負う宿命
・「引き分け」がキーワード
・「メークドラマ」の真相
終わりに―一流を目指すことなく、一流に並ぶ
・「誰が言ったか」ではなく、「何を言ったか」
第5章「野球言葉」の本質を知ろう
守備・バッテリー編
・「速いボールを投げられる人の特徴とは」ほか
攻撃・打者編
・「左対左は打者に不利、と言われる心理は」ほか
その他・全体編
・「人工芝ってやりにくい?」ほか
最終章 三村流「語録のススメ」。
『二流』が『超二流』になるには客観視できる能力が必要
本著『超二流のススメ』において『二流』が『超二流』となれるかどうかは、客観視できる能力に長けているかどうかではないかと感じました。
万人にはない独自の感性を持ち、努力の結果その才能が開花し様々なタイトルや記録を樹立できる選手を一流と呼ぶなら、その一流選手が活躍しやすい空間を演出できる能力、チャンスメイクに長けた選手を超二流と呼ぶのではないでしょうか?
送りバントや進塁打でランナーを得点圏に進めて、チームの4番打者にチャンスを回す役割を務めたり、ファールで粘って相手投手に球数を多く投げさせたり、ランナーとして出塁したならば相手投手に揺さぶりをかけて、味方の打者が狙い球を絞りやすくするなど、自身のプレーによって他の選手が活躍しやすい状況を作ることのできる能力を持つ選手を『超二流』と呼ぶのではないかと思います。
三村氏が福山大学で客員教授をお勤めになったときの講演題目が『特別な才能がなくても必要な人材になれる』だったそうですから、本著でもこの部分を強調されているのはもっともであると思います。
二流でもスター選手に負けずに第一線で活躍する方法
大谷翔平選手のような160km/hを超える速いボールを投じたり、毎年のようにホームランを30本以上放ちホームラン王のタイトルを何度も獲得したり、イチロー選手のように3000本以上の安打を放ち今なおメイジャーリーグの一線で活躍されているような選手がいますが、その域まで到達できる努力ができること自体がすでに才能であると三村氏は本書で述べています。
ただし、その域を目指すこと事態を否定はされておりません。
自身の成長のためにより高い目標をおいて練習することは大切であると説いております。
しかし、ある程度研鑽した日々を過ごしても、一流選手独特の感性を持たない選手が目標とする選手と同じ練習をしても、大半の選手が練習のし過ぎで故障し選手生命を縮めてしまったり、練習量のわりに思った結果が出ることなく引退してしまうことを目の当たりにしてきたそうです。
山本浩二氏や鉄人衣笠祥雄氏、北別府学氏などのカープ史に記録を刻むスター選手たちと同時代を生きた三村氏自身が一線でプロ生活を送るために学んだこと。
ホームランバッターになれなくても、チャンスで活躍できる選手になれなくても、「彼らにはできないこと」で「チームにとって必要なこと」があるはずと探し見つけることが大事であると触れております。
同じ努力や練習でも「どういう選手を目指して」で行うのか?
できないことをできるようにすることも大事なことですが、出来ていることの精度を上げることも大事なことであると思います。
三村氏の考える「超二流」とは具体的にどういうことなのかは本書にて感じて下さい。
選手としての限界「他の選手には持ちえない特別な才能」を持てないと感じたときに、特別な才能はないが「組織の中で必要とされる役割」を探し、特別な才能を持つ選手がよりその活躍を広げられるような「アシスト役のスペシャリスト」の位置を見つけられるかどうかが大事であると述べております。
この考えはプロ野球の世界だけではなく、アマチュア野球はもちろん一般企業でお勤めの会社員にも通じる考え方ではないでしょうか?
最後になりましたが、
今回の一冊は、札幌市厚別区で広島東洋カープとサンフレッチェ広島をこよなく愛す、お好み焼き店「しずる」を営む上向さんにお借りした本をご紹介していただきました。
上向さん、ありがとうございました。