バッテインググラブ(手袋)誕生時の状況と現在の役割の大きな違いとは
手袋やアップシューズ、Vネックジャンバー、アームガード・レッグガード、リストガード、サングラスなどなど、現在の学生野球で使用される防具などの野球用具のほとんどがプロ野球で採用されて、のちにすべての野球で取り入れられるようになったといってよいと思います。
現在60歳前後で活躍中の「大ベテラン球児」たちが、高校球児の時代に上記の野球用具が後年に登場するなど夢にも考えなかったことだと思います。
野球の歴史も100有余年、時代とともに用具も大きく変わりました。
さて、今回ご紹介させていただきますのは、2017年1月号の高校球児部活応援マガジンタイムリーVOL42にも掲載されております、ウイルソンバッテインググラブです。
そもそも「バッテインググラブ」なんてたいそうなネームのものがなぜ生まれたのかと言いますと、プロ野球選手が使用するバットに要因がございます。
野球創成期から現在に至るまで使用される材は異なれど、プロ野球選手が試合で使用するバットは「木」でできております。
木のバットを素手でつかんでボールを打っていたわけですが、ひとくちに野球選手と言っても数多の選手がいらっしゃるわけで、選手によってグリップの滑りが気になってしっかりとバットを振れないという不安があった選手がいたわけです。
そして、その不安を解消するために考えられたのが現在のバットグリップスプレーの前身、まつやにと呼ばれるバットグリップの滑りどめです。
現在も松材から抽出した成分を含んだ滑り止めは市販されておりますから、当時としても滑り止め効果は抜群だったのでしょう。
ところが、当時は木のバットを素手で直に握るため、バットが滑りにくくなったとはいえ使用すると手がベタベタしますから、攻守交替で守備に着くときにはそのベタベタ感を落とさなきゃならないわけで、まつやにを洗い落とすのに手間がかかりました。
そこで考えられたのがバッテイング用手袋。
のちのバッティンググラブと呼ばれるアイテムです。
バッテイング手袋が考えられた頃には、滑り止め効果も向上しており、滑りにくくなるとともに手のひらにかかる衝撃が大きくなっていきます。
というのもボールを打てば衝撃でバットとバットを握っている手のひらが若干動くのですが、滑りにくい効果からそれが小さくなるため、皮がめくれることも時に起こったそうです。
バッテイング用手袋の登場にそんな手のひらの怪我が発生することはなくなりました。
もともとは手のひらを滑り止めから保護するために考え出されたバッテイング用手袋、現在のバッテインググラブが求める機能とは違っていたのです。
ところが今日も大学や社会人野球、プロ野球ではグリップの滑り止め(グリップスプレー)は使用されておりますが、金属バットを使用する高校野球界ではグリップスプレーは使用禁止となっております。
手袋は必要ないのでは?と思いますが、なぜ中学・高校野球でバッテインググラブが使用されるのか?
恰好もあるとは思いますが、単純にバッティンググラブをして振った方が手が痛くないことがあげられます。
そして、手への死球時に素手の時とバッティンググラブをはめている時では怪我の度合いが違います。
よって怪我防止とバッテインググラブを使用したほうが素手でバットを握るよりも力が入る「機能性」ではないでしょうか?
主なものは、握ったときに力の入り具合を実感できる手の甲部分もベルトでフィットさせる「Wベルト機能」やリスト周りをがっちり固定し手首の可動域を制限することによってインパクト時の力を向上する「リストガード機能」など、バッテインググラブをすることにより打撃にプラスアルファの効果のでるものが数多く発表されております。
そして、現在のバットに巻かれているグリップテープは「バッテインググラブをはめて握ること」を前提として開発されているものが多く、バッテインググラブをはめてバットを握る方が素手で握るよりも滑りにくいのです。
そこで、各メーカーとも加工のしやすい合皮素材のバッテインググラブを開発していくのですが、ウイルソン社ではバッティンググラブの原点であるバッティンググラブを使用する上でバットを振ったときに手にフィットしている感覚をまず一番に考え、粘着性のある合皮を使用し、今回のバッティンググラブを開発されました。
いつの時代の選手も「振りやすい感覚」を大事にするようで、一度ウイルソンを使用した選手のリピーターも多く、イレブンでも売れ筋商品として店頭に置き続けております。